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後藤好子ひとり芝居
須磨子という名の正子〜女優・松井須磨子の光と影〜
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劇団・創造団体名 総合劇集団俳優館 

作品名 後藤好子ひとり芝居「須磨子という名の正子〜女優・松井須磨子の光と影〜」

作・演出 ふじた あさや

出演   後藤 好子

人頭  8〜9人(内キャスト1人)

上演時間 1時間10

上演可能時期 通年

上演実績 200410月初演 愛知県芸術劇場小ホール(名古屋市民芸術祭参加)

     2009 3月再演 岐阜市文化センター小劇場(岐阜市民の劇場)

     201011月東京公演 座・高円寺(平成22年度文化庁芸術祭参加公演)

功績:平成22年度岐阜県文化奨励賞受賞(主演:後藤好子)

    平成22年度日本照明家協会賞 奨励賞(照明:福井孝子)

 

   

[あらすじ]

時は、大正7年、初夏。
日本初の新劇女優としてカチューシャの唄とともに、
絶大な人気を誇る女優・松井須磨子

須磨子のために、
妻子をおいて家を出た、師であり、愛人でもある、
早稲田大学で将来を約束されていた
有望な元教授・島村抱月

さて、ここは、この二人の夢の結晶であり、
愛の城でもある芸術座の勝手口。
ひとりの女中が鼻歌まじりにカチューシャの唄を口ずさみ掃除をしている。彼女の名は木下正子。

須磨子の本名と同じ名を持つ正子は、
須磨子が故郷、信州・松代で行った「復活」の公演
を見て、非常に感激をし、いてもたっていられなくなり、
弟子にしてくれと押しかけ女中となったのだ。
須磨子を慕う正子の目を通して、
須磨子の普段の生活や抱月との愛、
カチューシャの唄の作曲者である中山晋平
抱月との師弟関係などが楽しく語られていく。
  

しかし、その年の秋
スペイン風邪で抱月はあっけなく世を去る。
残された須磨子の憔悴と周りとのいさかい。
正子は抱月の代わりに必死に須磨子を守ろうとするのだが、須磨子は翌年1月
自ら命を絶ってしまった。
残された正子は…。

 

[解説・その他]

須磨子の生きざまと彼女を取り巻く人間達を、
住み込み女中・正子(架空の人物)
の目を通して描くひとり芝居。
気のいい女中の噂話を聞きながら、
観客は知らない間に芝居の中に取り込まれていき
(芸術座の勝手口にいるように思えてきます。)
大きな感涙を得る事でしょう。
須磨子が、人間が愛しく思えてくる作品です。

 中西和久のひとり芝居でも知られる
ふじたあさや
の作・演出のオリジナル作品。
早稲田大学の後輩でもあるふじたの近代演劇における抱月への評価も興味深い。
また、主演の後藤好子は
名古屋を中心に活躍するパワー溢れる女優。
スーパー一座の大須オペラでも「カルメン」など
多くのヒロインを演じて評判を呼んだ。

 
 
                       
           口上   ふじたあさや

もし島村抱月がスペイン風邪で死ぬことがなく、したがって松井須磨子が自ら死ぬこともなく、芸術座が昭和20年代まで存続したとすると、日本の演劇はどうなっていたか? 

歴史に「もし」はないというが、こればかりは想像してみる値打ちがありそうだ。


小山内薫はあのあと当然芸術座で働いただろうから、築地小劇場を作る必要はなくなる。

そうなると、築地小劇場にはじまる、小山内路線もないことになる。二元の道などと唱えながら、経済のためと

はいえ、大衆に支持される芝居作りを推し進めた、抱月・須磨子路線が、新劇の主流になったにちがいない。とすれば、私たちが目にしたその後の新劇も、違うものであった可能性が大いにある。

 歴史が書き変わったかも知れない彼らの存在を、そこにあった情熱を、あらためてたどってみたい。そんな思いで選んだ素材である。

 須磨子をやりたがった後藤をいいくるめて、須磨子付の女中をやらせることにしたのは、女中の視点こそが、二人の位置を浮かび上がらせるのに有効だと思ったからである。

 

 1970年代から、名古屋の芝居作りに関わってきた。何人もの俳優、いくつもの舞台の誕生に立ち会ってきた。正直言って、間尺にあわない仕事である。それを40年近く続けているのは、30数年前、名古屋の養成所の募集広告を持ち込んだとき、ある演劇雑誌の編集者から「へえ、名古屋にも劇団があるんですか?」と言われた、そのときの怒りがまだ燃えているからである。

 だから、「田舎者だと思って、馬鹿におしでないよ!」という正子の台詞は、ぼくの台詞であり、多分同時に、間尺に会わない東京公演を実現しようと、悪戦苦闘している後藤好子の台詞でもあるのだろう。

 須磨子もまた、そう思い続けていたに違いない、とぼくは思っている。

2010年芸術祭参加公演パンフレットより)

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